山口圏域生活支援協議会は、行政機関、医療機関、更生保護施設など13機関から職員が集まり、生活困窮者等について情報共有や事例検討などを行なう協議の場です。毎月第4月曜日に開催され、2025年1月末までに計175回開催。133人の事例が取り上げられ、継続的な支援につなげてきました。
同協議会の事務局を担うのは山口地域ケアセンターです。同センターは「なでしこプラン」の一環としてほかにも、山口刑務所と連携してのやまぐち再犯防止プロジェクトや自立準備ホーム「なでしこ女子寮」の運営など幅広く生活困窮者をサポートしています。
山口地域ケアセンター所属の連携士は原田さん(後列右)を含めて8人。それぞれ異なる部署に所属しているため、各部署の業務で連携士の視点が必要なケースや、部署だけでは解決できない課題に対して連携士として何ができるかなどの情報交換会議を行なっている
近年、生活困窮者が抱える課題は複雑化・多様化しており、済生会だけでなく、相談支援等に関わる地域の機関との連携・協働により支援に当たることが重要となっています。そこで、山口地域ケアセンター前事務局長・篠原栄二さん(現、済生会保健・医療・福祉総合研究所 顧問)が関係団体を何度も訪問。さまざまな専門的視点から知識や地域の社会資源を共有し意見交換を行なう場の必要性を説明し、10年に山口圏域生活支援協議会が設立されました。
また、協議会で対応が必要とされた事案の実働部隊として「山口圏域生活支援センター」が13年に設置されました。
支援対象は、医療・介護・福祉等の支援を必要とする主に山口市に居住している生活困窮者。湯田温泉病院や山口総合病院の無料低額診療事業で医療につなげ、生活全般に支援が必要な人には協議会メンバー間の情報共有のもと、生活の保持ができるように積極的な協議、支援活動を行なうことを目的としています。
山口刑務所の理容師資格を持つ受刑者の社会貢献活動の受け入れを行なうなど、さまざまな形で受刑者・矯正施設退所者を支援
協議会が支援する人の中には矯正施設退所者も多く含まれます。刑期を終え、わずかな現金や身の回り品しか持たずに出所することはしばしば。住む場所や働く場所が見つからず再び犯罪に手を染めてしまうケースは少なくありません。
支援が一筋縄ではいかない理由は、病気や障害がある、コミュニケーションが苦手といった対象者の特性や彼らを取り巻く人間関係上の問題など多岐にわたります。複合化した課題を持つ対象者を継続して支援することはとても根気がいることで、支援者が心身ともに疲弊してしまうことも。そのようなときに協議会が支援者の「心の拠り所」になっています。同じ思いを持ち、同じ対象者と関わることで、課題の解決に向けた策を多角的に練ることができます。
24年4月から協議会会長を務める山口地域ケアセンター・やまぐち障害者生活支援センター管理者の原田純子さん(連携士)は「協議会という場があることで個別のケースで連携しやすい。困ったときはあの人に相談しようという関係性をつくれている」と手応えを語ります。
山口地域ケアセンターには連携士の資格を持つ職員が8人在籍。輪番制で協議会に参加し、地域課題について学ぶ場としても活用しています。
原田さんには印象に残っている協議会メンバーからの言葉があります。それはある刑務所職員から「これまでは受刑者が出所後にどのような生活をしているのか、どのような支援を受けているか分からなかった。協議会に参加しているとそういった貴重な情報が得られる。それを今の入所者の支援にもつなぐことができている」といわれたことです。山口地域ケアセンターが声をかけたことで始まった協議会ですが、参加するそれぞれの機関にとっての有益性があることが分かります。